男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「ことり、郁にはちゃんと説明しようと思う。」
「っ、でも、」
ことり自身も、まだ心が落ち着いていない。
もう、今後はスカイのメンバーと関わることができない。
別れを告げることもできない。
森山ことりとしての自分を見てもらうこともできないのだ。
「...酷いよ。」
ことりはぽつりと呟いた。
ここで昨日までの陽が自分だと知らされても、何も変わることはない。
逆に軽蔑されるのがオチだ。
そう思うと怖くて、胸が苦しくなる。
軽い気持ちで兄の変わりになり活動してきた自分を恨めしく思った。
やっぱり、陽の代わりになるんじゃなかった。
黙り込んでしまったことりを見て、陽はふぅ、と息を吐いた。
陽はことりの気持ちを察していたが、このまま郁に隠し続ける事も出来ない。
時間の問題だ。
丁度、この場所にはことりもいる。
陽は妹の気持ちを察していたが、覚悟を決めて口を開く。
「...昨日までの俺は俺じゃなかった。」
「、え?」
どういう事かわからずに、郁は聞き返す。
陽の隣で泣きそうな表情を浮かべて立ち尽くしていることりをちらりと見て、
まさか、と郁は予想した。
「...陽の、妹が?」