男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
戸惑いと収録
明け方、ことりは母親に送られて家に帰った。
今日は学校を休めと言われ、渋々私服に着替える。
母親はことりに頑張ってね、とだけ告げると仕事を休んで
再び病院へと向かった。
ぽつんと一人家に残されたことりは、
ソファーに座りぼうっとしていた。
ピンポーン、
インターフォンの音が聞こえ、
心臓がドキリと鳴った。
時計を見れば7時。
時間だ。
躊躇いがちに玄関に向かい、がちゃりとドアを開ければ
マネージャーの木村と、大きな袋を持った女性が立っていた。
「おはよう、ことりちゃん。」
「・・・おはようございます。」
木村と女性はズカズカと家に押し入り、リビングのテーブルに
袋の中身を出し始める。
そこには、男物の服や陽の髪形に良く似たウィッグ。
さらには化粧品やさらしまで入っていた。
ビックリして目を見開けば木村は笑顔で口を開く。
「今から陽君になってもらうからね。」
どうやら、数時間前の出来事は夢ではなかったらしい。
ことりは今になって実感した。
拒否する間もないまま、服を脱がされ胸にぐるぐるとさらしを巻かれる。
男物の服を着せられると、
女性に椅子に座らされメイクが始まった。
(もう、こうなったらやるしかない...。)
ことりの心には、諦めしかなかった。
断ることも、拒否することもできないなら、
やるしかない。
本当は嫌だけれど、少しだけ陽への罪悪感がある為に
やってもいいかな、という軽い気持ちがあった。