男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「陽君、話はまだ終わらないの?」
柚希と南は帰ったらしく、
時間が経っても戻ってこない陽が気になり楓はこちらに来た。
しかし、目の前の光景を見た瞬間楓は動きを止めた。
郁はバッ、とことりから離れると楓に視線をうつした。
「なんで、ここにいるの...ことり。」
楓が自分の名前を呼んだ瞬間、ドクンと心臓が鳴った。
無意識に、陽の服を握る。
「俺を迎えに来てくれたんだ。...とりあえず、今日はもう帰らない?」
気を利かせた陽がそう言えば、楓は渋々頷く。
郁もそれに頷いた。
「また、明日な。」
郁は未だに困惑しているらしく、ぎこちなく返事をする。
まだ状況の整理がうまくできていない為に、大人しく引き下がることにした。
これ以上話を続けても、きっと、うまく会話ができないだろう。
陽がことりの腕を引き、行こうと声をかける。
こくん、と小さく頷き歩き出した。