男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「ことり、有難う。」
「...え?」
「お前が、スカイを変えてくれた。今日、改めて実感したんだ...ことりは、スカイに必要なんだと思う。」
急な発言にことりは兄を見れば、陽は優しく微笑んだ。
ことりのおかげで、メンバーは変われた。
雰囲気も自分がいたころとは随分違っていた。
仲間同士の間にあった気まずい空気もなくなっている。
それを目の当たりにした陽は、寂しい気持ちにもなった。
自分ではなく、ことりが変えたという事実に嫉妬も少しだけした。
「ことりも、スカイに、」
そう言いかけた所で、車が家の前に停車した。
「ついたわよ。」
母親に続きの言葉を遮られ、早く降りるように言われる。
「今日、お母さん夜勤なんだから早く用意してね!
楓君の家まで送って行ってあげるから。」
「あ、うん。」
2人は言われるがまま車から降り、家の中に入る。
「お兄ちゃん、何か言いかけなかった?」
「ああ...うん、何でもない。」
陽は笑って誤魔化すと、用意をするために部屋へと向かう。
ことりは納得がいかない様子で、少し大きめの鞄を手に取った。