男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
*
「いらっしゃい!ことり先輩!!...それに、陽君。」
彩乃はことりを見たあと、恥ずかしそうに陽に視線をうつした。
「お邪魔します。」
遠慮がちに家にあがると、彩乃はことりの手を引く。
「おにーちゃん!ことり先輩達来たよ!」
リビングに向かって叫べば、そこから楓が姿を現した。
タオルで髪を拭きながら出てくるところを見ると、風呂上りのようだ。
「早く入れば?」
楓は二人にそう言うと、再びリビングに戻っていく。
そのあとを追うかのように彩乃はことりを引っ張り、リビングへと入って行った。
陽もそれに続く。
荷物を隅の方に置くと、ソファーに座った。
「今更だけど...急に泊りに誘ったのに来てくれてありがとうございます!」
「お前は何時も急すぎるんだよ。」
楓が呆れたように言えば、彼女は だって、 と言葉を濁らせた。
「どうせ、陽君と仲良くなりたかったんでしょ。」
「ちがっ///」
どうやら兄にはバレていたようだ。
否定しようとしたが顔が真っ赤に染まってしまった為に無意味だった。
ことりは苦笑し、陽は首を傾げた。
「陽君、彩乃が好「やめてよ!!///」
急に大声を出した彩乃を見て、陽は声をあげて笑った。
「彩乃ちゃん、面白いな。」
「っ~///」
更に顔を真っ赤にした彩乃を面倒臭そうな表情で楓は見た。
ため息をついて視線を戻そうとしたとき、ことりと目が合う。
「...楓、くん。」
「..今更、その呼び方気持ち悪いんだけど。」
「...楓。」
「うん、何?」