男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
ことりは何かを言おうとしたが、口を閉ざしてやめてしまった。
それを見て彩乃が何かを思いついたように言う。
「あ、お兄ちゃん。明日コンサートのリハーサルなんでしょ?丁度土曜日だし、見に行ってもいい?」
「...陽、どうする?」
「俺は別にいいと思うけど。」
身内の見学は許されてるし、と言えば彩乃は目を輝かせる。
「いいんじゃない?」
楓からの許可もおり、彩乃は嬉しそうな表情を見せた。
一方ことりは複雑そうだ。
「あたしお風呂まだだから入って来るね!」
彩乃がそう言い、リビングを出ていく。
残された3人の間に微妙な空気が漂った。
「ことり、アド教えてよ。」
「え?」
「俺、アンタの知らないし。」
「い、いいの?」
「駄目なの?」
「う、ううんっ、」
ことりはポケットから携帯を取り出し、赤外線で受信をした。
まさか、自分の携帯のアドレス帳に楓のものが登録されるなんて思っていなかった。
もう、関係は続かないと思っていたことりは素直に嬉しかった。
じっと登録されたアドレスを見ていると、楓は小さく笑う。
「あ、楓、後で話があるんだけど。」
「?うん。」
突然陽にそういわれて頷けば、彼は何時もの笑顔で笑った。