男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-


楓はテレビをつけると、丁度心霊特集がやっていた。

それを見て、ソファーに座っていた双子は同じタイミングで視線を逸らす。


「...。」


それに気づき、音量を少しあげて二人の様子を伺う。

テレビに視線を向けようとしない彼等を見て、楓は口元が緩んだ。

「苦手なの?」

「っ、苦手なわけないだろ。」

「へえ。」

チャンネルを変えようとしない楓に痺れを切らした陽が机の上にあるリモコンに手を伸ばしたが、

陽よりも早く楓がリモコンを取る。

「苦手じゃないなら見ようよ。僕、こういうの好きだし。」

「楓一人で見ればいいだろ!」

「やっぱり怖いんじゃん。」

テレビ画面に映し出された幽霊の映像に、陽は表情を引きつらせる。

ことりは固まっていた。


「ことり?」

「....。」


放心状態の彼女を見て、さすがに可哀想だと感じて楓はおとなしく陽にリモコンを渡した。

その時だった。



パッ、と電気が消えて部屋が真っ暗になる。


「うわっ!」

「停電?」

楓はブレーカーが落ちていないか確かめに行くために立ち上がる。

刹那、風呂場の方から彩乃の悲鳴が響いた。

停電になった事に驚いたのだろう。


「僕、ブレーカー見てくる。」

「彩乃ちゃん、大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ。」


楓はそう言ったが、何処か心配だ。

先程の心霊特集を少しだけ見てしまったせいで怖いが、様子を見に行く覚悟を決めた。


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