男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
30分後、
仕上げにウィッグをかぶったことりは、
完璧な陽へと変身を遂げた。
「・・・わあ、」
あまりにそっくりな為に、木村は驚きの声をあげる。
表情は陽とは比べて固いものの、誰も双子の妹なんて気づかないだろう。
「すごいよことりちゃん!」
ことりは ほら、 とマネージャーから渡された鏡に自分をうつし、
硬直した。
「え・・・、嘘。」
「これなら絶対にバレない。イケるよことりちゃん。」
「・・・。」
ことりは、木村に不安そうな表情を向けたが、
彼は何食わぬ顔で時計を見る。
「そろそろ行こう。間に合わなくなる。」
「ちょ、ちょっと待ってください!
私、やっぱり無理です!収録って、歌番組のでしょ!?
歌も知らないし、ダンスもできないから、絶対、できない・・・。」
「大丈夫だって。歌は音楽が流れてるから、口パクでどうにかなるし
ダンスはリハーサルの時に覚えてくれれば...。」
「り、リハーサルって...。」
「一時間もあれば、大体は覚えるよ。」
「ええ!?」
無茶ばかりいう木村に驚きを隠せない。
いいからいいから、と背中を押されて、ことりは家を出ると
車に乗せられた。
(なんでこんなことになったんだろう...。)
「ハァ...。」
ため息をつけば、木村は今日のスケジュールについて話始めた。
「今日は、9時から一時間リハーサル。
10時から番組の収録がある。12時からは雑誌の撮影。
色々わからないことがあったら、俺に聞いてくれればいいよ。」
「・・・はあ。」
絶対無理だと、ことりは思った。