男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
もう一度一番最初の立ち位置につく。
陽は彼の肩を軽く叩き呼んだ。
「陽?」
何も言わずにことりがいる方を指さすと郁がそちらを向いた。
そして固まる。
「さっきから気になってたんだけど、あれ誰だ?」
南の言葉に楓が自分と陽の妹だということを告げれば驚いて声をあげた。
「マジで!?楓の妹って、モデルしてんだろ?」
「そんなことは後でいいから、リハーサル。」
「後で紹介しろよ!」
「はいはい。」
再び、最初の音楽が流れ始めた。
それでも、ことりの存在を意識してしまい郁は戸惑っていた。
ことりは、じっと郁を見つめる。
彼女から見ても、郁の様子が可笑しいことがわかる。
「郁さん、どうしたのかな。」
木村がそう呟く。
どうにか、しなきゃ。
このままではスカイ自体が駄目になってしまう。
郁が可笑しいのは、自分が正体をバラしてからだとなんとなくわかってた。
自分の責任でもあるんだ。
ことりは、ばっと走り出した。
「ことりちゃん!?」
木村が驚いたような声をあげたが、止まらない。
スタッフ達の中をかき分けて、ステージの前に立った。
監督や、スタッフの視線が自分へ集う中彼女は乱れた息を整えて
ステージに立つメンバーを見上げる。