男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
ことりは、頬を赤くして潤んだ瞳で彩乃を見た後に再びステージに視線を向ける。
会場内がざわめきだした。
「...あれ、陽の妹?」
「え、あ、うん。」
「...俺達のファンなのか?」
「...。」
南の問いに答えず、無言で立ち位置に戻った。
南は、どこかで聞いたことのある声だと思いつつも陽につられて位置につく。
「...。」
郁は、一度深呼吸した後に真剣な顔つきに変わった。
(俺、馬鹿だ。)
戸惑いが消え、しっかりとした足取りに変わる。
(今の俺はスカイなんだ。待っててくれるファンもいる。しっかりしないと...)
私情をだして、メンバーに迷惑をかけていた事を改めて自覚した。
悩んでいる暇はない。
今は、コンサートを成功させる事だけを考えなければいけない。
「もう一度、お願いします!!」
郁は大声で叫んだ。
吹っ切れた様子の郁に、メンバーは安心して笑う。
スタッフや監督もほっとしたような表情に変わり、
再び音楽が流れ始めた。
全員のダンスが揃い、完璧なパフォーマンスを見せるスカイ。
監督やスタッフは魅入っていた。