男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
パチパチパチ、
リハーサルが終わったとたん、監督が拍手をする。
つられて、スタッフも手を叩いた。
「このままいけば、コンサートは大成功ですね。」
スタッフが嬉しそうに言えば、監督は頷く。
メンバーは呼吸を整えながら、嬉しそうな表情を見せる。
「...楓。」
郁は振り返り、楓を見た。
先程のことりの言葉が脳内で繰り返される。
彼女はスカイを想っている。
こないだまで自分がいた、このグループが大切なのだろう。
その気持ちを、無駄にはしたくない。
それに、
_____っ、好きです。
そう言ったことりを見て、無理やり押さえつけていた気持ちが溢れだしたのだ。
ことりが楓の事を想っていたとしても、やっぱり諦められないと思う。
今、スカイは恋愛している場合ではないかもしれない。
けど、俺は 森山ことり が好きなんだ。
「...俺、お前には負けないから。」
いつもの表情で郁は告げた。
楓は呆れたような顔をした後、口元を釣り上げて笑う。
「郁にはあげないよ。」
「それはこっちの台詞だ。」
2人の間にライバル意識は生まれたものの、普段の郁に戻ったようで
陽は安心した。
状況が理解できない南は首を傾げていたが、
柚希は陽とことりを見比べて静かに考え込む。