男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
何かが引っ掛かる。
陽の雰囲気は先日までのものとは違う。
それに、今日リハーサルを見に来ている陽の妹が気になるのだ。
陽や楓、郁はきっと何かを知っている。
「お兄ちゃん、陽君...お疲れ様!すっごく良かったよ!」
彩乃はステージ前まで駆け寄り、笑顔で話しかけた。
楓は当然だ、と自信に満ちた表情を見せる。
陽は有難う、と綺麗に微笑んだ。
すると、彩乃は頬を赤くして陽から視線を外す。
そんな様子を見た南が怪しく笑い、陽の背中をバシバシと叩いた。
「陽はモテますなあ。」
「はあ?」
「ってゆか、楓の妹なんだよな?俺、雪平南!」
「あ、奥村彩乃です。一応、雑誌のモデルしてます。」
軽く頭を下げれば、 兄と違って愛想がいいなあ と感心したように声を漏らした。
そして、彩乃の一歩後ろにいる先ほど叫んでいたことりに視線を向ければ
それに気づいたのか彼女はビクリと反応した。
「お前は?」
「...森山ことりです。」
「あー、陽が良く話してた自慢の「南!余計な事言うなよ!」
慌てて陽は南の口を塞いだ。
そんな2人の様子を見て小さく笑えば、南は目を見開く。
陽の手を口から離し、ことりを見た。
「...陽?」
「えっ、」
南はことりを見て、呟く。
「な、何言ってんだよ。」
「....気のせいか。だって陽は、ここにいるもんな。
やっぱ双子って似てるな!」