男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-





「ついたよ。」

「・・・。」

テレビ局前につき、ことりは目を見開いた。

今までに感じたことのない緊張感が走る。


マネージャーは駐車場に車を止めると、

後部座席のドアを開けてことりに出るように指示する。


「一人称は俺。あとは、適当に話を合わせてくれてればいいから。」

「・・・そんな簡単に、行くはずないですよ。」

「大丈夫大丈夫。俺もフォローするから。」


不安で仕方がない。

ことりは車から降りると、木村についていく。

メイクを担当してくれた女性とは入り口で別れた。

ぺこりを小さく頭を下げれば、女性は笑顔で手を振ってくれる。



「おはようございます!」

テレビ局に入った直後、自分に向けて挨拶をしてくる黒いスーツの関係者達。

「お、おはようございます。」

ことりは引き攣った笑顔で挨拶してしまった。

(なんなのよここ・・・。)

大勢の大人たちに囲まれているだけで緊張するというのに、

こんな場所でカメラの前で収録なんてできるわけがない。


無意識に自身が震えているのを感じた。


「陽さん、こちらです。」

「・・・。」

「陽さん?」

「あ、ハイ!」

木村に呼ばれて、はっと顔を上げる。

そうだ、自分は今陽だった。

『ことりちゃん、しっかりして。』

小声で木村にそう言われ、

ことりは曖昧に頷いた。

< 15 / 213 >

この作品をシェア

pagetop