男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
南の言葉にことりは内心酷く動揺した。
「だって双子だしな。」
陽がそう言い誤魔化すように笑えば南もつられて笑う。
「スカイの皆さん、お疲れ様です!」
「お疲れ様です!本番期待してますよ!」
スタッフに声をかけられて、メンバーも笑顔で言葉を返す。
本番に向けて、残りの会場のセッティングを始める関係者達は忙しそうだった。
「邪魔になりそうだし、今日は帰ろっか。」
陽がメンバーに言えば、全員が頷いた。
楽屋に戻る為に、移動を始めた時だった。
丁度、ステージの天井にある照明の為の機材が不安定に揺れ、
それを固定していた金具が外れた。
真下には郁がいる。
それにいち早く気付いたことりは、咄嗟にステージにあがった。
「危ないっ、」
「ぇ、」
どん、
郁を思いきり突き飛ばした瞬間、ことりの体に強い衝撃が走った。
ガシャン!!
そのまま、体は崩れ落ちる。
意識が朦朧とする中、郁が無事だった事を確認して安心した。
驚愕して自分を見ている郁を最後に、意識を手放す。