男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-


「障、害?」

「まだ確かなことはわからないから何とも言えない。

早ければ今日中に目を覚ますだろう。」

一瞬、目の前が真っ暗になった。

「...。」

言葉を失う。どうして、こんな事になったんだ。

「ごめんッ」

郁の口から、謝罪が出る。それにムッとした陽は言い返す。

「郁は何も悪くないだろ!謝るなよ!」

「...有難う、陽。」

「とりあえず、ことりの病室に行こう。」

医者に頭を下げて、二人はその場を後にする。

教えられた病室に急いで向かえば、ことりはベッドで眠っていた。

規則正しい呼吸を繰り返し、眠っている彼女を見て少しだけ落ち着いた。

「早く目を覚ますといいな。」

「ああ。」


バンッ!

突然、病室の扉が勢いよく開かれた。

息を切らした母親が入って来る。

「ことりは!?」

「母さん...。」

ベッドで眠っていることりに駆け寄り、母親はそっと彼女の頬に触れた。

「っ、良かった。」

目に涙をためて、安心したように微笑む。

「担当医の方から、説明を聞いてきたわ。命に別状はないみたいで良かった。」

「うん...。」

「あの、」

「貴方は、郁君だったかしら?」

「はい。...ことり、さんは俺を庇ってくれて、こんな状態になってしまったんです。

俺の責任でもあります。すいませんでした。」

陽には謝らなくてもいいと言われたが、母親にはそういうわけにはいかない。

深く頭を下げれば母親は彼に頭を上げさせる。


「何も謝る事はないわ。ことりが自分でした事だもの。」

母親の言葉に、思わず涙腺が緩んだ。


「ことりにとって、貴方は大事な存在なのよ。

郁君は何も悪くない。自分を責めないでね。」

「...っ、」
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