男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「...ことり、皆待ってるんだから早く目を覚ませよな。」
陽が妹の頭に触れて優しく撫でれば、ピクリと反応を見せた。
けれど、目は開かない。
____早く、目を覚まさなきゃ。
誰かの声が聞える。
それに答えたいのに、体が思うように動かない。
__起きなきゃ。
必死で重たい瞼を開けようとする。
意識がだんだんとはっきりしてきた。
「ことり!」
知っている声が響く。
けれど誰なのかは認識できない。
「っ、」
視界がだんだんと明るく変わっていく。
ぎゅ、
郁が彼女の手を握りしめた。
暖かい感触が広がる。
目をゆっくりと開きぼんやりとしたまま顔を横に向けて、
握られている手を確認して、無意識に小さく微笑んだ。
「ことりっ、」
陽は彼女の顔を確認して、ほっと息を吐く。
「ここ、は?」
絞り出た声は小さなものだったが、はっきりと認識できた。
「病院だよ。何処か、痛いところとかない?」
陽が優しく聞けば大丈夫ですとぎこちなく返答した。
少し様子が可笑しいことりに不信感を抱く。
「...ことり?」
郁が彼女の名前を呼ぶと、肩を揺らして反応を見せる。
そして頭を押さえた。
どうやら、頭が痛むらしい。