男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-



翌日、ことりは無事退院できることになった。

ことりの荷物を持って一歩先を歩く母親に小走りでついていく。

暫くは通院する事になるらしい。

担当医に頭を下げてから病室を出た。

車に乗り込むと、そのまま家に向かい走り出す。

今まで何度も見たことのある町が、すべて新しいものに見えて

少し悲しくなった。




「あ、さっき陽君から連絡があったんだけど

あなたに会いに楓君が来るみたいよ。」

「楓、くん?」

誰?と首をかしげれば「スカイ」のメンバーで友達だということを教えてくれた。

改めて、自分は凄いと思う。

今人気の「スカイ」のメンバーに兄がいるし友達が二人もいるのだ。

しかし、楓が来ると言われてもどうすればいいのかわからない。

悩んでいると、そんなに悩まなくていいのよと言われた。

家につくと、丁度陽が収録に向かおうとしているときだった。


「おはよう、ことり。」

「...おはよう、ございます。」

「敬語じゃなくていいって。違和感あるし。」


そんな事言われても、

ことりからすれば陽が自分に挨拶をしてくること自体違和感があるのだ。

作り笑いを浮かべて誤魔化すと頭に手を置かれて撫でられた。


「収録、行ってくる。」


「っ、待って!」

「え?」

「私もつれてって。」

< 160 / 213 >

この作品をシェア

pagetop