男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「楓?」
未だに険しい顔をしていた彼の名前を呼べばハッとしたように顔をあげた。
「何でもない。」
楓は自然に手を離すとことりの歩調にあわせて隣に立った。
離れた手が少しだけ寂しいと感じたが、
ことりは何も言わずについていった。
「ねえ、あれ、スカイの楓?」
「隣に女の子いるっぽくない!?」
突然聞こえた声に振り向けば、自分達を携帯で写メっている女子2人がいた。
「彼女!?」
「えーマジで!?ショック!」
キャーキャーと騒ぎながら再び写メを撮ろうとする。
楓はことりを背に隠して、やめてくれない?とテレビで見せているような笑顔を向ける。
ファンはぼっと顔を赤くしたが、楓の願いよりもことりの存在が気になるらしく
楓君が庇った~!ねえ、彼女なの!? としつこく問いただしてくる。
背後に隠れていることりがびくりと震えたのがわかった。
「...陽の妹。僕とはなんの関係もないよ。」
彼女ではない事を伝えると、ファンは少しだけほっとしたような表情を見せた。
しかし、妹だということが信じられないらしい。
彼女は楓の背から出て、おどおどしながら前へと出た。
「...勘違いさせて、ごめんなさい。」
ばっと頭を下げればファンはぽかんとする。
顔をあげたことりを見て、大きく目を見開く。
「なんか、陽に似てる~。」
「妹って本当?」
「でもさ、妹だからってスカイに近づこうと思わない方がよくない?」
ドクン、
言われた言葉が心に深く突き刺さった。
何だろう、前にも似たような事を誰かに言われた気がする。