男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
再び謝ろうとしたことりの口を手で押さえると、
「それ間違い。」
と、テレビにでているときの可愛らしい人懐っこい笑顔から一変した
無表情に近い顔でファンを軽く睨んだ。
楓の見たことのない表情を見て、ファンは驚く。
「僕が、この子に近づいてるの。これから用事あるからまたね。
今後も応援宜しく。」
立ち尽くしているファンを気にすることなく楓はことりに声をかけた。
戸惑いながらも先に歩く楓についていく。
「っ、あたし、楓のファンだったのに~!」
「...今の酷いよね、ファンを裏切るなんて。
でも、こっちには写メがあるじゃん。」
にやりと笑みを浮かべた友人に、頷く。
「信じられない、陽の妹だからって...」
痛い目にあってもらわなきゃ。
ファンの一人が笑った。
*
それからはなるべく人気の多い道を避けた。
幸い、おっかけやファンに遭遇することなくことりの家につく。
「どうぞ。」
家の鍵をあけて楓を招けば、お邪魔しますと言って中に入る。
とりあえずリビングに案内して飲み物とお菓子を適当に出せば礼を言われた。
「...楓、ありがとう。」
「ああ、うん。」
「でも、さっきの...良かったの?」
ファンの人、すごく怒ってたみたいだったけど。と言えば
楓はプライベートまでファンに気を使ってちゃストレスたまるし、と
呆れたように言った。