男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「・・・陽くん、大丈夫?」
冷たい表情をした 奥村 楓 が話しかけてくる。
言葉は心配しているのに、声音は低く、少し怖かった。
テレビで見たことのある楓は子供らしい笑顔で、
愛嬌があった。
カッコイイより、可愛いが似合う男の子だったはず。
なのに、目の前にいる彼は 違う 。
ことりは驚き、こくこくと頷く事だけで精一杯だった。
「陽くん、センターなんだからしっかりしなよ。」
楓が無表情で言ってきた。
どうやら彼は、陽の事をあまり良く思っていないらしい。
「う、うん。」
「すぐに僕が、抜くけどね。」
「え?」
「・・・ハァ、楓。いい加減にしろ。」
佐野 郁が呆れたように言う。
「陽も気にするなよ。」
「....。」
ぽんぽん、と自分の肩をたたいて安心させようとしてくれる郁は
自分の味方らしい。
(・・・なんなの、この雰囲気。)
てっきり、メンバー同士仲がいいと思っていたのに
そうでもないみたいだ。
コンコン、
楽屋にノックが響いた。
がちゃり、
そしてドアが開く。
「もうすぐリハーサルですんで、スタンバイお願いしまーす。」
『はい。』
刹那、メンバーの目が変わった気がした。
関係者の人から衣装を受け取り、全員が素早く着替え始める。
「え、ちょっ///」
目の前で着替え始める彼等に慌てて背を向ける。
「何してんだよー、陽。」
南が お前も早く用意しろよ と言い衣装を投げつけてくる。
それを受け取り、「と、トイレ行ってくる!」と言い
慌てて楽屋を出て行った。