男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「...そう、なんだ。」
「きっと、その時から気になってたんだと思う。」
何を、とは言わずに楓は小さく呟いた。
スカイの為に必死で猛練習をして少しでも追いつこうとしていることりが
気になってしょうがなかった。
何処か危なっかしくて、見ていないとまた無理をしすぎて倒れてしまう気がして、
ふわりと微笑む彼女が可愛くて。
自然と顔が熱くなって、ドキドキして、
自分だけ見てほしいと思うようになっていた。
けれど彼女が見ているのは自分ではない。
ツキン、ツキン、とことりの頭が痛みだす。
楓の悲しそうな表情を見ると、心が苦しくなる。
彼には笑っていて欲しかった。
曲が終わり、耳からイヤホンを外して楓に手渡す。
「他のも聞く?」
優しく問いかけてくる楓から目を離せなくなった。
良くわからない気持ちが胸を締め付ける。
「...もう一回、この曲聞きたい。」
「わかった。」
はい、と再び差し出されたイヤホンを見て、ことりは受け取る。
楓の方を見て、彼の髪を耳にかけてから片方をつけた。
突然の行為に驚いていると、ことりは先ほどよりも少しだけ彼に近づき
もう片方を自分の耳につける。
「一緒に聞きたいの。」
彼の傍が心地よかった。