男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「...。」
楓が、隣にいることりの手の上から自分の手を重ねた。
驚いて少し強張ったが、自然と緊張は解けていく。
「...嫌じゃないの?」
「え?」
「僕と、こうするの嫌じゃないの?」
楓は手に視線を落とした。
自然と頬が赤く染まる。
「嫌じゃないよ。」
「なんで?」
「なんでって、」
分からない。
けれど彼のそばが落ち着くのだ。
彼を見ると少しだけ胸がきゅう、と締め付けられて
ドキドキして、恥ずかしくなって。
もっと触れていたいと思ってしまう。
何なんだろう、この気持ち。
少し考えて、ある答えに思いついた。
____好き、なのかもしれない。
楓を見てこんな気持ちになるのは、きっと記憶が無くなる前も
彼の事が好きだったからかもしれない。
「ことりは、僕の事どう思ってんの?」
記憶がない彼女に聞くのは間違っているかもしれないが、
聞かずにはいられなかった。
「...好き。」
自然と、ことりの口から想いが告げられる。
「楓が、好き。」
少しだけ潤んだ瞳で自分を見上げてくることりに、
楓は戸惑った。