男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-



受け入れてしまいたいと言う気持ちと、

今は記憶がない為に自分の事を好きだと勘違いしているだけだから

受け入れてはいけないという気持ちがまじりあって

訳がわからなくなる。

郁もことりを想っている事は楓も知っていた。

記憶が戻れば、きっと彼女は郁を選ぶに決まっている。

そう考えると苛立った。




「ことり、何か勘違いしてない?」

「勘違い?」

「記憶が無くなる前は、郁の事が好きだったクセに良くそんな事言えるよね。」

「...え?」


楓が纏う雰囲気が、がらりと変わった。

自分を突き放すような冷たい空気にことりは戸惑う。


「私、郁君のこと、好きだった...の?」


確認するように問えば、楓は返事をするかわりにため息をついた。

「...僕、帰る。」

急に立ち上がり、鞄を持って玄関へと向かう。

「楓っ、私、」

ことりも慌てて後を追った。

しかし、お邪魔しましたと言うとそのまま出て行ってしまう。

呼び止める事もできなかった自分に腹が立った。

____楓を、傷つけた。

後悔が押し寄せてくる。






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