男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-


私は、本当に郁が好きだったのだろうか。

___わからない。

けど、どうして楓を見るとこんな気持ちになるのだろう。

(どうして、なんで、)

好きだと言ってしまったのだろう。

本当に馬鹿だ。


(早く、思いださなきゃ)


記憶がないままじゃ、何もできない気がした。

ちゃんと自分の気持ちに整理をつけたい。

そして、ちゃんと伝えたい。




ふと、つけっぱなしになっていたテレビに視線をうつした。

丁度スカイが映し出されている。

昔放送された番組の再放送らしい。

自然と釘づけになる。



『今日は、新曲のCDの発売日なんですよね?』

『はい、そうなんです!』

___あれは、陽じゃない。

いつもの雰囲気の陽とは違う。

誰なんだろう、陽とそっくりだ。

『どういった曲になってるんですか?』

『俺、うまくは説明できないんですけど...聞いてみればわかると思います!

凄く良い曲になってるんで、みなさん、是非買ってください!』

少し恥ずかしそうに司会者に答える彼を見て、

ことりは一つの結論にたどり着く。


(あれは、私?)


木村や楓が、自分は依然兄のかわりに男装していたと聞いた。

そのとき収録したものだろう。

会場は今日行った場所と同じだ。



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