男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-


それを合図にするかのように、ばっと走り出す。

楓に伝えなきゃ。謝らなきゃ。


「え?ことり!?」

突然走ってきたことりに声をかけたが、彼女はそれを無視して適当な靴を履くと

走っていってしまう。

突然の妹の行動に驚いたが、追いかけることはしなかった。

中に入り付けっ放しのテレビを見ると、スカイが映し出されている。

そこにいる自分の恰好をしたことりを見て思わず苦笑した。










楓の家がある方向に向かって走る。

息が切れて、苦しいが立ち止っては居られない。

頭の中は楓でいっぱいだった。



「楓!!」



歩いている楓を見つけて思わず叫んだ。

辺りは薄暗い。

まわりには誰もいなかった。

楓は驚いた様子で振り向く。

ことりは駆け寄った。


「私、やっぱり楓が好きだよ。」

「っ、だからそれは、」

「記憶、戻ったの。」

「...え?」

「さっき、記憶戻ったの。

でも、郁じゃなくて楓が好きだった。やっと気づいたの。

郁には、憧れていただけだった。

さっきは、ごめんなさっ」

言葉は最後まで続くことなく、強い力で楓に抱きしめられた。







< 176 / 213 >

この作品をシェア

pagetop