男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
それを合図にするかのように、ばっと走り出す。
楓に伝えなきゃ。謝らなきゃ。
「え?ことり!?」
突然走ってきたことりに声をかけたが、彼女はそれを無視して適当な靴を履くと
走っていってしまう。
突然の妹の行動に驚いたが、追いかけることはしなかった。
中に入り付けっ放しのテレビを見ると、スカイが映し出されている。
そこにいる自分の恰好をしたことりを見て思わず苦笑した。
*
楓の家がある方向に向かって走る。
息が切れて、苦しいが立ち止っては居られない。
頭の中は楓でいっぱいだった。
「楓!!」
歩いている楓を見つけて思わず叫んだ。
辺りは薄暗い。
まわりには誰もいなかった。
楓は驚いた様子で振り向く。
ことりは駆け寄った。
「私、やっぱり楓が好きだよ。」
「っ、だからそれは、」
「記憶、戻ったの。」
「...え?」
「さっき、記憶戻ったの。
でも、郁じゃなくて楓が好きだった。やっと気づいたの。
郁には、憧れていただけだった。
さっきは、ごめんなさっ」
言葉は最後まで続くことなく、強い力で楓に抱きしめられた。