男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
そして、強引に唇を奪われた。
思わず目を見開く。
けれど嫌じゃなかった。
瞳を綴じて、震える手で彼の服を握る。
そっと離れて、楓はまっすぐことりの目を見た。
「僕も、ことりが好き。」
ボッとことりの顔が真っ赤に染まった。
そんな彼女が愛しくて、もう一度強く抱きしめる。
心の底から幸せだと思えた。
*
ずっとこうしていたいけど、何も言わずに飛び出してきてしまった為に
そろそろ帰らなければ心配されるだろう。
「家まで送ってく。」
ことりから離れて楓は彼女の手を取った。
少しだけ頬を赤く染めて、ありがとうと礼を言う。
今までとは少し違う関係に、戸惑いを覚えた。
けれど楓は「スカイ」。
やっぱり自分とは違う。
しかしことりは、記憶が無くなる前のような考えは無い。
自分と彼は住む世界が違うなんて、思えなかった。