男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
素早く衣装に着替えると、男子トイレから出た。
楽屋に戻るとそこにはすでに準備が整っているメンバーが居た。
「おせーんだよ陽。」
南が呆れたような表情で話しかけてくる。
「うん、ごめん。」
「じゃあ、行くか。」
郁が静かに言った。
それに頷き、全員が収録場へ向かう。
「・・・・。」
「?」
そういえば、メンバー内でも最年長の橋本柚希とは一言も話していないな
と思い視線を向ければ、ぱちりと目があった。
気まずくなりばっと視線を外す。
(び、ビックリした...。)
収録場につくと、テレビでしか見たことがないセットが並んでいる。
少し緊張が落ち着いたというのに、また鼓動が早くなってきた。
「じゃあ、最終確認をします。」
聞きなれた声に、ことりはばっと顔をあげた。
目の前にはスカイのマネージャーの木村が、台本を持って立っている。
「き、木村さん...。」
不安そうな声をあげれば、木村は笑う。
「どうしたんですか、陽さん。」
「~っ、...やっぱり、無「陽さんは、ここに座ってくださいね。」
「え!」
言葉を遮られて、台本を見せられた。
やはり人気というだけあり、ど真ん中の席だ。
「本番は、司会者とトークをして終わったらスカイはすぐにステージに移動。
歌うのは最初だから、宜しくお願いしますよ。」
『はい。』
メンバーがはっきりと返事をするなか、ことりは沈んだ顔をしていた。
「陽、今日可笑しくないか?」
「さ、佐野さん...。」
「佐野さん?お前、いつも俺の事名前で呼んでただろう?」
「あ、あー...そうだった!大丈夫だよ、郁。」
引き攣った笑顔を向ければ、郁は訝しげな表情を浮かべた。
「そんな笑顔じゃ、テレビに出れないよ。」
呆れたような表情を見せる楓に、 ゴメン と謝るとため息をつかれた。