男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
兄の行方
*
「先輩、どうしたんだろ。」
突然行ってしまったことりを心配していると、彩乃の携帯が震えた。
携帯を開けば、兄からメールがきている。
___陽がいない。会場内にいるはずだから探すの協力して。
「…え?」
唐突すぎて一瞬理解できなかった。
どうしようか悩んでいると、スカイを呼ぶコールが大きくなっていく。
証明は消え、会場は薄暗くなった。
大きなスクリーンにスカイの各メンバーが映し出される。
BGMが流れ始めた時、メンバーが登場した。
「…陽くん、いるじゃん。」
兄のメールは嘘だとは思えない。
きっと何か勘違いしていたのだろう。
ほ、と安心してコンサートを楽しもうとした時、関係者がトランシーバーで何かやり取りをしているのが目についた。
「…まだ見つからないんですか!」
(…どういうこと?)
陽くんは今、ステージにいるのに。
彩乃はステージ上の陽に視線を向けた。
少し違和感を感じたがダンスは完璧で、陽本人にしか見えない。
(…違和感?)
ふと、違和感に疑問を持った。
なんだか、笑顔がいつもより可愛らしく感じる。
まるで女の子みたいだと思った。
(女の子…、まさかっ、)
ことりが突然消えた事。
兄からのメール。
関係者の言葉。
有り得ないとは思うが、もしかして今ステージにいるのはことりなんじゃないだろうか?
予想でしかないが、ことりは陽が戻ってくるまでの代理としてステージに立っている気がした。
ことりと陽は双子だ。
「っ、」
彩乃は席を立ち、走り出した。
(陽くんを探さなきゃ。)