男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
そう聞いて今までに何回か収録をしている歌番組の、監督を思い出した。
「ああ。…先日の収録の時に気になる子を見つけたらしくてね、是非スカイのメンバーに入れてくれと言ってきたんだ。
最初はすぐに断ったんだけど、引き下がる様子を見せないから一応話を聞いたんだ。
すると、面白い事がわかってね。
君と双子の妹、入れ代わっていたそうじゃないか。」
何故、バレているのかわからず、何もいわずに社長に視線をうつす。
マネージャーの木村に頼まれたからといっても、双子の妹が男装してスカイにいたなんて、有り得ない。
これをきっかけに社長が怒り、スカイを辞めさせられたりしないだろうかと
不安になった。
「私にも全く分からなかったのに、あの監督は見破っていた…そう考えると、あの監督の目を信じてみたくなってね。
試してみたんだ。」
その試しというのが、
ことりを陽の変わりにコンサートに出させて、実力を見る
ということらしい。
この社長がやることは大掛かりすぎて、陽は信じられないという視線を向ける。
「ちょうど、スカイにメンバーを一人追加しようと思っていたし…君の妹が私を納得させるようなパフォーマンスを見せてくれたら、今朝宣伝したオーディションを中止してもいいよ。」
自分勝手すぎると思った。
ある意味これは、
このコンサートは
ことりのオーディションでもあるのだと知り、驚きを隠せない。