男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-

絶句していると、社長は再び声を出して笑った。


「…拝見させてもらうよ。」


*

ことりは凄まじい歓声の中、ステージに立っていた。

曲を聞くと、自然に体が動く。

緊張感はそれほど無い。むしろ、仲間とたつステージが心地良いとさえ感じた。

猛練習した楓と同じパートを難無くこなし、

次のステップに移る。

その時、楓と目があう。

微笑めば、彼は少しだけ頬を赤く染めた。



___やっぱり、スカイに居たいと強く思う。

今は陽のかわりとしてこのステージに立っているけど
いつか、森山ことりとしてこのステージに立ちたい。

ことりの目つきが変わる。

堂々とダンスで自分を表現する。

歓声がより大きく響いた。

「今日の陽、ちょっと違うね。」

ぽ〜っと見とれていたファンが、友人に向かって呟いた。

「うん、かっこいい〜…」


そう思ったのは、ファンだけではなかった。

ガラス越しにコンサートをみていた社長も感心したように ほお と声をもらす。
隣にいた陽はごくりと息をのんだ。

「…今すぐ衣装に着替えなさい」

「え、あ、はい」

突然渡された衣装に素早く着替える。それを見て社長は満足そうな表情をしてから、ボタンを押した。

刹那、目の前のガラスが開く。社長はスタッフに何かを指示すると彼等は陽の体にワイヤーを取り付けた。

「監督の目は、間違いではなかったようだね。」

「え、それって…」

社長は笑みを浮かべて、陽の背中を思い切り押した。
彼の体がぐらりと傾き、そのままステージへと落下していく。

それをみたファンが戸惑いの声をあげた。


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