男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「お疲れ〜。」
「お疲れ、南。」
インタビューも終わり、楽屋に戻る「スカイ」。
グループのメンバーは5人で編制されている。
その中で、最も人気なのが 森山陽 と 佐野郁。
メンバーの仲は悪くはないが、少なからず嫉妬はあるらしく
微妙な空気が漂っていた。
「今日もすごかったな。陽が手を振っただけであの歓声だろ?」
雪平 南(ゆきひら みなみ)はインタビューをうけていた時とは一変した
冷たい表情で言った。
それを聞いていた郁が呆れたようにため息をつく。
「嫉妬かよ、南。」
「嫉妬じゃね〜って、ただ、調子に乗ってんじゃねーって言いたいだけ。」
「それを嫉妬って言うんだ、馬鹿。」
気にすんなよ陽、と郁は声をかけたが陽は困ったように笑い ああ。 と
頷いただけだった。
「俺、先帰るわ。」
「今日はどっか寄らねーの?」
いつも飯食いにいくのに、と南は言う。
「ああ。明日、妹の誕生日だから何か買おうと思って。」
「ふ〜ん、じゃあまた明日な。
音楽番組の収録、遅れるなよ!」
「わかってるよ!」
南の言葉に返事をしてから、メンバーにお疲れ、と声をかけて
楽屋を出た。
こないだ、新しい靴がほしいと母親に言っていたことを思い出し
躊躇いながらも陽は女の子の靴がある、可愛らしい店に入っていった。
深く帽子をかぶり、なるべく自分が「スカイ」の陽だとバレないように
気をつける。
自分は何故か嫌われている為に、受け取ってもらえるかどうかわからないが
ことりが好きそうなデザインのサンダルを購入した。
「ねえ、あれって陽じゃない?」
「あ、ほんとだ。ちょっと似てるよね。」
客がちらちらとこちらを見て小声で話している。
急いで金を払い、綺麗にラッピングしてもらうと
速足で店をでた。