男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
試されていたなんて想像もつかなかったことりは、
驚いて何も言葉を発する事が出来なかった。
「…試してわかったよ。
君は、スカイに必要な存在だ。今後も頑張ってくれ。
活躍を楽しみにしているよ。」
そこまで言われ、ことりはその場にぺたんと座り込んでしまった。
「ことり、大丈夫?」
心配してくれた楓に、びっくりして腰が抜けたことを伝えれば彼は声をだして笑う。
「…俺もビックリしすぎて何がなんだかわかんねぇ…でもまあ、宜しくな!ことりっ!!」
南は座り込んでしまっていることりに手を差し出した。
ぎこちなく握り返すと南はそのまま無理矢理引っ張り立たせる。
「…お前なら、スカイとしてやっていけるだろう。」
「柚希くん…」
「呼び捨てでいい。」
「柚希っ、ありがとう。」
柚希は優しい笑みをことりに向けた。
「まあ、一緒に頑張ろうな!」
「お兄ちゃん…。」
「ことりなら、大丈夫だろ。何かあれば何時でも相談に乗るから。」
「郁…。」
「ことり。」
最後に楓に名前を呼ばれた。彼に視線をうつせば、少し照れ臭そうに口を開く。
「…おかえり。」
「っ〜…」
思わず、涙が零れた。
「…なんで泣くの。」
楓が呆れたように言えばことりが だって、 と口ごもる。
「しょうがないな。」
ことりを引き寄せると、メンバーの前にも関わらず頬に軽く唇をつけた。
驚きで、涙が止まる。
「てめっ、楓!何してんだよ!」
南が声をあげれば彼は いいじゃん と言う。
陽は苦笑しているし、柚希は呆れた表情をしていた。
「楓。」
「何、郁。」
「絶対、負けないから。」
真剣な表情の郁を、楓は笑みを含んだ顔で彼を見る。
「あ、そ。」