男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-



「...はぁ、はぁ...。」

なんとか無事に曲が終り、メンバーは観覧客に笑顔を見せる。

刹那、

『キャー!!!』

爆発的な歓声があがった。

ことりはほっとしたような表情を見せる。

「スカイのみなさん、有難うございました!」

司会者の言葉を合図に、 カット! という監督の声が響いた。

メンバーは息を整えると、こちらに向かって歩いてくる監督に視線を向けた。

「素晴らしかったよ!」

がし、と陽の両手を掴み、視線をまっすぐ合わせる。

「は、はあ...。」

「森山陽君!君は素晴らしい人材だ!期待しているぞ。」

「え?」

突然褒められ、何がなんだかわからない。

監督はことりの背中を数回叩くと、上機嫌で戻っていった。


「...陽。」

ビク、

郁の低く冷たい声が背中に突き刺さる。

「い、郁...。」

ことりは焦った。自分勝手な行動をし、

メンバーに迷惑をかけた。

痛いほど理解しているため、謝ろうと口を開いた時だった。

「楽屋で話がある。」

「...うん。」

収録場にはまだ観覧客がいる。

そのために、スカイのマイナスイメージを与える発言はできない。

郁に言われて頷くと、お疲れ様ですと挨拶をして

楽屋へと戻っていった。












がちゃん、

5人は楽屋に戻る。

南、郁、楓、柚希の視線が自分に降り注いだ。

ピリピリした空気に肩を震わせれば、楓が陽を睨みつける。

「僕たち、お前の引立て役でも、バックダンサーでもないんだけど。

分かってる?」

「ご、ゴメン。」

ことりは、謝るしかなかった。
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