男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「...はぁ、はぁ...。」
なんとか無事に曲が終り、メンバーは観覧客に笑顔を見せる。
刹那、
『キャー!!!』
爆発的な歓声があがった。
ことりはほっとしたような表情を見せる。
「スカイのみなさん、有難うございました!」
司会者の言葉を合図に、 カット! という監督の声が響いた。
メンバーは息を整えると、こちらに向かって歩いてくる監督に視線を向けた。
「素晴らしかったよ!」
がし、と陽の両手を掴み、視線をまっすぐ合わせる。
「は、はあ...。」
「森山陽君!君は素晴らしい人材だ!期待しているぞ。」
「え?」
突然褒められ、何がなんだかわからない。
監督はことりの背中を数回叩くと、上機嫌で戻っていった。
「...陽。」
ビク、
郁の低く冷たい声が背中に突き刺さる。
「い、郁...。」
ことりは焦った。自分勝手な行動をし、
メンバーに迷惑をかけた。
痛いほど理解しているため、謝ろうと口を開いた時だった。
「楽屋で話がある。」
「...うん。」
収録場にはまだ観覧客がいる。
そのために、スカイのマイナスイメージを与える発言はできない。
郁に言われて頷くと、お疲れ様ですと挨拶をして
楽屋へと戻っていった。
*
がちゃん、
5人は楽屋に戻る。
南、郁、楓、柚希の視線が自分に降り注いだ。
ピリピリした空気に肩を震わせれば、楓が陽を睨みつける。
「僕たち、お前の引立て役でも、バックダンサーでもないんだけど。
分かってる?」
「ご、ゴメン。」
ことりは、謝るしかなかった。