男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「大丈夫ですよ、曲自体はそれほど難しくないんで...
けど、ダンスも歌もそれぞれパートに分かれてるんで、
同じパートの人どうし、息がぴったり合わなければ成功しない曲です。」
「...まじかよ。あ、俺は郁と柚希と同じだ。」
紙を見て、南は呟く。
「・・・ってことは、僕は、」
「楓は陽とだな。」
「・・・。」
楓はキッ、とことりを睨んだ。
「...おい、このダンス、難しくないか?」
柚希が呟く。
メンバー全員が紙に目を通し、目を見開いた。
アクロバティックのような振付が多すぎる。
しかも、同じパートどうし息があわなければ失敗しそうなものばかり。
「まあ、頑張ってくださいね。
スケジュールの関係で、新曲のレッスンは明日とコンサートの二日前しか
ないんですよ。各自自主練でどうにかしてください。」
「げ。」
「あ、陽さん!後で迎えに来ますんでそれまでに着替えておいてください。」
「は、ハイ...。」
木村は言いたいことだけをいうと、楽屋をでていった。
楽屋は沈黙する。
「ハァー、ま、決まったことはしょうがねえよな!」
「練習しかないな。」
南と郁の言葉に、柚希は頷く。
「この後、郁と柚希は予定空いてるか?」
「夜なら空いてる。」
「俺も。」
「なら3人で夜から練習しようぜ。」
南の言葉に二人は頷いた。
「...僕帰る。」
楓はそんな3人を横目に、さっさと着替えて楽屋を出て言ってしまった。
ことりはどうすればいいのかわからず、
茫然としていた。