男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「今日は野外撮影になるよ。」
「野外撮影?」
「うん、町にでての撮影。」
町に出ての撮影と聞いて、ことりは青ざめた。
町にはたくさんの人がいる。
その中で写真撮影をするなんて緊張するどころの話じゃない。
「っ...無理です!」
「無理じゃないって~、ほら、これに着替えてメイクさんに
メイクしてもらってきて。」
木村は陽に衣装を差し出すと、楽屋へと押し込んだ。
無言で衣装を見つめ、ハァとため息をつくと仕方なく着替え始める。
(大丈夫、撮影は今日だけだ、大丈夫。)
自分に言い聞かせ、落ち着かせる。
着替え終わり、鏡に自分の姿をうつして改めて 陽 そっくりなことに
驚く。
コンコン、
ノックの音が聞こえて返事をすると、
外からメイク担当の女性が入ってきた。
*
そして、メイクが終わると木村が再び現れた。
「陽さん、時間です。」
「...ハイ。」
力なくそう返事をすれば、木村は陽の肩を数回たたいて
頑張れ と言葉をかける。
少しだけ肩の力が抜けたような気がした。
まずは、スタジオをでてすぐのところにある公園で撮影をするらしい。
公園についた瞬間、スタッフがテキパキと用意をし始めた。
「ねえ、あれってスカイの陽じゃない?」
「え?マジで!?うわーっ、超カッコイイ!」
通りすがりの一般人は、陽の姿を見つけると黄色い声をあげながら
集まってくる。すぐに人だかりができた。
スタッフが、撮影に邪魔にならないように注意をしている姿が目に入る。
「キャー!陽くんこっちむいてー!」
声をかけられて振り向けば、さらに歓声は大きくなった。