男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
(...さすが、お兄ちゃん)
やっぱり人気は絶大だ。
「陽さん、始めますよ。」
「あ、はい。」
準備ができたのか、スタッフが声をかけた。
「よろしく、陽くん。」
人懐っこい笑顔をしたカメラマンが挨拶をしてくる。
ことりはすかさず頭を下げた。
「よろしくお願いします。」
「じゃあまず、普通に好きなポーズをとってみて。」
「っ、え。」
好きなポーズ、と突然言われて困惑することり。
さすがに雑誌の撮影でピースはまずいだろうと思い考えたが思いつかない。
それを見てカメラマンが指示をだした。
「いつもならパッとできるのに、今日は調子が悪い?」
「す、すいません...。」
いつもなら、と言われてもことりが知るわけがない。
困ったような表情をすればパシャ、と一枚撮られた。
そのことに驚いているとまた一枚撮られる。
「そのまま歩いてみて。」
「え?歩くんですか?」
「うん。」
言われるがまま歩けば、カメラマンは何枚も写真を撮っていく。
思っていたより緊張はしなかった。
ぶわぁ、と風が吹く。
ことりは無意識に髪をおさえる。
本来の自分は髪が長いため、いつもの癖でおさえたのだが
髪に触れてはっとする。
パシャ、パシャ、
「陽くん、今日はいつもより落ち着いてるね~。」
「そう、ですか?」
「うん、カッコイイっていうか、可愛いよ。」
その言葉に思わず振り向き、カメラマンを見る。
可愛い、と言われたのは初めてだった。
嬉しくなって自然と笑顔になる。
最後に一枚、その表情をカメラにおさめた。