男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
それから、写真撮影はあっという間に終わった。
初めは緊張したものの次第に慣れてきて
色んな表情を出せるようになる。
カシャ、
最後の一枚を撮り終わり、カメラマンは満足したような笑みを向けた。
「陽君、お疲れ様。今日の陽君はよかった、いつもの雰囲気とは違ったからね。」
「あ、ありがとうございます。」
「次もよろしく頼むよ。」
ポン、とカメラマンに肩に手を置かれてことりは驚く。
「お疲れ様です。」
木村はすぐにことりのもとに駆け寄り、
笑顔を向ける。
「今日の仕事は終わりだよ。」
「お疲れ様です。」
今の時間は午後4時。
たしか、郁との待ち合わせは午後6時。
余裕で間に合うだろう。
「陽くーん!」
黄色い歓声をあげる女子生徒には、ことりは目を向けなかった。
ことり自身、嫌いだからだ。
いつもの陽なら振り向いて愛想笑いを浮かべるだろう。
「ことりちゃん、ファンサービスも立派な仕事なんだよ。」
耳打ちされてことりはため息をつきたくなった。
ことりは振り向き、今日一番の笑顔を向ける。
「俺の事、見ててくれてありがとう。
これからも応援よろしくね。」
『キャーーー!!!!!』
爆発的な悲鳴に耳を塞ぎたくなったが、ことりは耐えた。
「これでいいんでしょ。」
「上等です。」
木村はことりを連れて、スタッフ達に挨拶をしながら控室に向かった。