男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
教室に戻ると、お決まりのように女子生徒達が自分のまわりに
集まってくる。
「森山さん、どうだった?」
「...人違いだって言ってた。」
ことりは嘘をついた。
彩乃を傷つけたくはなかったからだ。
「本当に?」
「うん、昨日は仕事してたって...。」
「じゃあ、あの記事はなんなのよ?」
「合成か何かだと思う...たぶん。」
曖昧に答えると、女子生徒はことりをギロリとにらんだ。
「ま、今回は陽君に免じてそういうことにしておいてあげるわよ。」
納得がいかない様子だったが、女子生徒は身を引いた。
そのことにほっと息をつく。
今回は引いてくれたが、次がどうなるかわからない。
どうして彩乃が昨日、陽と一緒にいたと発言したのか、
できれば真相を調べようと考える。
ことりは、そのまま自分の席に戻ると、午後の授業の準備をしだした。
キーンコーンカーンコーン、
予鈴の音で、ハッと頭を上げた。
どうやら、自分はいつのまにか眠ってしまっていたらしい。
無理もなかった。昨日は一睡もしていない。
ふと時計を見れば、授業はすでに終わっていて
下校を始める生徒達がいる。
「!」
ことりは慌てて教科書を片づけると鞄を持って教室を出た。
(ダンスレッスン行かなきゃ!)
どっとくる疲れを無視して、ことりは急いだ。