男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
交通事故
*
コンコン、
「・・・。」
部屋でぼうっとしていると、ノックの音が聞こえた。
どうせ母親だろうと思い、無視をしていればがちゃりとドアは開く。
「ことり、」
少し控えめに自分を呼んだのは、風呂あがりの兄だった。
「風呂開いたから、次入れよ。」
「・・・うん。」
「今からコンビニ行くんだけど、何かほしいものある?」
「いらない。もう私なんかに構わないでよ。」
ことりはばっと立ち上がり、陽の横を通り過ぎて風呂場へ向かおうとする。
陽は、それを腕を掴んで反射的に止めてしまった。
がしっ、
「な、何。」
「俺、何かした?」
悲しそうな、真剣な表情で問いかけてくる。
「っ、別に・・・」
「ことりは、俺の事嫌い?」
ドクン、と心臓が鳴った。
どうして陽が悲しそうな表情を見せるのかもわからないし、
いちいち自分に構ってくる理由もわからない。
今まで陽に対して酷い態度ばかりとってきたのに、
優しくされる理由もわからなかった。
「大っ嫌い。」
吐き捨てるようにそういうと、
ことりは兄の手を振り払い風呂場へと歩いていく。
そんな妹の姿を見てため息をつくと、気晴らしにコンビニに向かおうと
足を運んだ。