男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「ハァ....。」
休憩時間、ことりはため息をついた。
ダンスが難しすぎる。ことり以外のメンバーは確実に上達していく中、
一人だけ置いて行かれていた。
そんなことりを見かねた楓が、ため息交じりで近寄ってくる。
「陽君、真面目にやってる?」
ことりは汗だくの首をタオルで拭きながら、
楓を見上げた。
ドキ、
「うん...ごめん。」
楓は、汗で濡れている髪と暑さで頬が赤くなっていることりを見て
心臓が高鳴った。
動揺を隠せない楓は、ばっと視線を逸らした。
「楓?」
何処か様子の可笑しい楓を心配し、大丈夫?と彼に触れようとした瞬間
ばし、と手を払われる。
「あ、」
楓も無意識だったらしい。
「ご、ゴメン。」
「僕こそ...。」
彼はことりを見て、小さく謝った。
「遅れてすいません。」
刹那、郁が姿を現した。
「郁、お前おせーって。」
お前がいないと全く練習になんねえ、と南は言う。
「しょうがないだろ。これでも急いできた。」
「佐野も来たことだし、練習を再開するわよ。」
再び、練習が始まる。
ことりは少しふらふらしたが、気にせず立ち上がり
最初の立ち位置へと移動する。
「陽、お前大丈夫か?」
「え?」
そんなことりを見た郁が気づき、彼女に近寄る。
「顔色悪いぞ。」
「だ、大丈夫だよ。」
「無理、するなよ。」
心配そうな表情を見せる郁にドキドキしつつ、ことりは平常を保ち笑顔を見せた。