男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-



「彩乃!」

「どうしたのお兄ちゃん...って、陽君!?」

リビングに入ってきた、楓に抱えられていることりを見て彩乃は声をあげた。

「熱があるみたいなんだけど」

楓はソファーにことりをそっと置きながら言った。

彩乃は陽の額に手を当てて、驚く。

「...お兄ちゃんは陽君の洋服着替えさせてあげてて!汗でべたべただから余計に風邪が悪化しちゃう!」

「う、うん」

「あたしは冷えピタと風邪薬とってくるから後はよろしくね!」

テキパキと動いている彩乃を見て、楓はさすがだと思った。

リビングを出て行った彩乃を確認してから、近くにたたんで置いてあったスウェットの上下を手に取る。

着替えさせようと、ことりの上着に触れた。

ぱし、

弱弱しい力で、楓の腕を掴む。

「...陽君?」

「自分で、きがえる...」

「そんなふらふらでできるの?」

「できる、」

怠い体を無理やり起こしたことりは、ふらふらになりながら立ち上がる。

「っ、」

刹那、ガク、と体が前に倒れそうになった。

楓は慌てて彼の体を支える。

「ハァ...大人しくしといてよ。」

彼は無理やりことりの体をソファーに押し付けて、弱弱しく抵抗することりを無視して上着をまくり上げた。

「...サラシ?」

「っ...じぶんで、す、る」

どうしてサラシなんかしてるんだろう、と楓は思った。

そして、思ったよりも細い腰を見てさらに疑問は深まる。

「かえで、自分でするから!」

「大人しくしてよ」

起き上がろうとする彼女の頭を押さえつけて、乱暴にサラシを取った。

押さえつけたせいで装着していたウィッグが取れる。

そして、サラシがとられて男子にはあるはずのない膨らみが現れる。

楓の目は再び大きく見開かれた。
< 57 / 213 >

この作品をシェア

pagetop