男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「彩乃!」
「どうしたのお兄ちゃん...って、陽君!?」
リビングに入ってきた、楓に抱えられていることりを見て彩乃は声をあげた。
「熱があるみたいなんだけど」
楓はソファーにことりをそっと置きながら言った。
彩乃は陽の額に手を当てて、驚く。
「...お兄ちゃんは陽君の洋服着替えさせてあげてて!汗でべたべただから余計に風邪が悪化しちゃう!」
「う、うん」
「あたしは冷えピタと風邪薬とってくるから後はよろしくね!」
テキパキと動いている彩乃を見て、楓はさすがだと思った。
リビングを出て行った彩乃を確認してから、近くにたたんで置いてあったスウェットの上下を手に取る。
着替えさせようと、ことりの上着に触れた。
ぱし、
弱弱しい力で、楓の腕を掴む。
「...陽君?」
「自分で、きがえる...」
「そんなふらふらでできるの?」
「できる、」
怠い体を無理やり起こしたことりは、ふらふらになりながら立ち上がる。
「っ、」
刹那、ガク、と体が前に倒れそうになった。
楓は慌てて彼の体を支える。
「ハァ...大人しくしといてよ。」
彼は無理やりことりの体をソファーに押し付けて、弱弱しく抵抗することりを無視して上着をまくり上げた。
「...サラシ?」
「っ...じぶんで、す、る」
どうしてサラシなんかしてるんだろう、と楓は思った。
そして、思ったよりも細い腰を見てさらに疑問は深まる。
「かえで、自分でするから!」
「大人しくしてよ」
起き上がろうとする彼女の頭を押さえつけて、乱暴にサラシを取った。
押さえつけたせいで装着していたウィッグが取れる。
そして、サラシがとられて男子にはあるはずのない膨らみが現れる。
楓の目は再び大きく見開かれた。