男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「え!?陽君今日泊まるの!?」
「うん。」
彩乃にバレないように、ことりを自室に運んだ後、妹のもとに向かった。
ことりの家族は夜勤で帰ってこない。
熱がある彼女を一人、家に帰すのは心配だった。
「陽君の家族、今日は帰って来ないらしいから。いいでしょ」
「う、うん...それはいいけど...。」
彩乃は少し緊張しているようだ。
それを見抜き、楓は不思議そうな表情を見せる。
「彩乃?」
「え、あ、何?お兄ちゃん、」
「...僕の部屋には入らないでね。陽君、熱があるしそっとしといてあげた方がいいと思うから」
「...うん。」
そういわれて、少し残念そうに俯いた。
楓は、ことりの男装がバレない為にそう言ったのだが
彩乃は納得がいかないらしい。
ことりが来てから、彩乃の様子がいつもとは違う気がして楓は口を開いた。
「何?彩乃、陽君の事好きなの?」
直球すぎる質問に驚いて顔をあげ、彼女は顔をみるみるうちに真っ赤に染め上げた。
「雑誌に、ホテルに向かう陽君との合成写真が載った時も、否定しなかったもんね」
「っ~!」
「陽君だけは、やめときなよ」
今の陽は、男ではない。女なのだ。
それに、もし今風邪をひいているのが本物の陽だったとしても
今のスカイは恋愛をしている場合じゃない。
それに、彩乃との熱愛が報道されれば一気にスカイの人気は落ちる。
「...なんで、お兄ちゃんに決められなきゃいけないの」
「スカイのためだから」
練習で疲れたのか、楓はふああと欠伸をしてリビングへと向かう。
彩乃はきゅ、と心臓あたりを服の上から押さえた。