男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
*
「本当に、お世話になりました。」
午前7時。ことりは玄関前にいた。看病してもらったあげく美味しすぎる朝食を御馳走になり、申し訳ない気持ちになる。
「…今日仕事あるの?」
楓の質問に、木村さんに聞いておくと言えばメールしてよね、と言ってきた。
「じゃあ、またね陽。」
「うん、お邪魔しました!」
奥村家を出て、一人帰路につく。
楓と打ち解ける事ができた為に、嬉しくて自然と口元が緩んだ。
「…あ、お兄ちゃん。」
「何?」
「何時から陽君の事呼び捨てで呼ぶようになったの?」
前までは 陽くん って呼んでたのに、と問い掛ける。
「…別に、いいでしょ」
「ふふ…素直じゃないなあ。でも、よかったね!」
「…うるさい///」
ことりと同じパートになれたことと、自分だけ秘密を知っているという事が何故か嬉しかった。
(…ことり、ちゃんと帰れたかな)
ことりの事を考えると、少しだけ早くなる鼓動に違和感を感じて楓は首をかしげた。
まだ彼は、この感情がなんなのかわからない。