男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
嫉妬
*
コンサートの日は次第に近づいてくる。
スカイはダンスレッスンや、歌番組の収録におわれる日々を送っていた。
少しでも早く完璧に近づけなければならない。
「最近、陽と楓仲良くね?」
南がレッスン中に、ぽつりと呟いた。
新曲のパート練習を各自で行っていたのだが、数日前より確実に、誰が見てもわかるほどに楓と陽は仲が良かった。
郁は二人に視線を向けて、うなづく。
「そうだな。…ま、いいんじゃないか?」
「とかなんとか言って~。本当は気になるんじゃねえの?お前、陽と一番仲良かったもんな。」
南がさりげなく言った言葉が、郁の胸にずしりと伸し掛かった。
「んなわけないだろ。」
「ふ~ん。」
「陽、ダンスうまくなったね。」
「楓のおかげだよ。」
この調子なら、コンサートの日までに全曲踊れるようになるかもしれない。
陽は嬉しそうに笑った。
「何にやにやしてんの。キモい。」
「酷っ」
南の言葉が脳内をぐるぐると支配する。
郁は自然と二人の会話に耳を傾けてしまっていた。
「あ。」
「郁、そこは左足が前だ。」
柚希に言われてハッとなった。
「ごめん。」
何処か上の空の郁を見て、柚希は盛大にため息をつく。
「...遊びじゃないんだぞ。」
「・・・。」
遊びじゃない、
そんなこと、言われなくてもわかってる。
けれど、陽と楓が仲良くしているのを見るとどこかチクリと胸が痛んで
良くわからない気持ちになるのだ。