男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-








そして森山家に、一本の電話がかかってくる。

丁度、ことりは風呂からあがり部屋に戻ろうとしていた時だった。


母親が電話に出たのだが、

明らかに様子が可笑しいことに気づく。


「・・・え?」

言葉に詰まっている母親を見て、

ことりは足を止めた。

「今すぐ向かいます。」

がしゃん!

母親は乱暴に受話器を置いて、車のキーを引っ掴み玄関へと向かう。

「ことりも来なさい!」

「う、うん。」

何か大変なことがあったのだと察したことりは

頷き母親についていった。



向かった場所は病院。

「お兄ちゃんに、何かあったの?」

状況はいまいちわかっていないことりは母親に聞くが、

返事をしてくれなかった。

どうやらただ事じゃなさそうだ。

ことりは静かに黙って、病院につくのを待った。






駐車場に車を止め、走る。

受付を通り、集中治療室前まで向かった。

ことりは大きく目を見開く。

治療室の中に、自分の兄がいる。

実感がないが、心臓が一度大きく唸った。


「うわあああっ、」

母親が泣き崩れる。

ことりはどうすることもできず、ただ、じっと母親を見ていた。

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