男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「お前には関係ないだろう。」
うっとおしい、というような視線を向けられことりはうっと言葉を詰まらせる。
たしかに自分はおせっかいかもしれない。
けれど、このまま柚希を放置して帰るなんてできない。
「...。」
彼女は少し考え、ひらめいたように手を叩いた。
「それじゃあ、家くる?」
「え、」
「やっぱり、こんなところで野宿は良くないしどうせなら俺の家おいでよ。」
ことりは何も考えず言った。
グループ内でもそんなにことりとは仲良くない。
自分はどちらかと言えば嫌われてる方だと思っていたのに、
突然家に来ないかと誘われて動揺を隠せない。
「柚希。」
「...いいのか?」
「うん。こんなところで野宿するよりマシだろ?でも、ちゃんと木村さんに連絡いれろよ。」
はたから見ればどちらが年上かわからない。
そんな自分に、柚希はフッと笑った。
「ああ。」
「じゃあ、お母さんに電話してくる。」
ことりは柚希から少し離れて携帯を取り出すと電話をかけた。
何回かコールが続いたあとに、出る。
『ことり、アンタ何処ほっつき歩いてるの?まだ練習は続いてるの?』
「今帰るよ。でね、お願いがあるんだけど...。」
『何?』
「スカイのメンバーの一人を、家に泊めてあげてほしいんだけど...。」
『別にいいけど、大丈夫なの?男装バレないの?』
「あ。」
そこまで考えてなかったことりはハッとした。
けれどもう遅い。
大丈夫、としか言いようがなかった。
「...お母さんも協力してね。」
『しょうがないわねえ...わかったわよ。』
気をつけて帰って来なさいよ、と言い残し通話は終了した。
ことりは携帯をポケットにしまうと柚希の元に戻る。
「良いって言われたから、行こ。」
「...すまないな。」
「気にすることないよ。」