男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
柚希と並んで道を歩く。
あまり話したことがない為に変に緊張してしまう。
「...本当にいいのか。」
彼は少し気にしているようで確認の為にもう一度ことりに聞いた。ことりは頷き、もちろんと言う。
言い出したのは自分なのだ。後に退けるわけがない。
陽の仕事用の携帯がポケットの中で震えた。ことりはそれを取り出す。木村からメールが来ていた。どうやら柚希が彼に連絡したらしい。
『ことりちゃん、今日は柚希をよろしくね』
一言、絵文字もなしにそう書かれていた。一緒に住んでいるって、どういうことなんだろう。
「柚希。」
「なんだ?」
「どうして木村さんと一緒に住んでるんだ?」
「関係ないだろう。」
ため息交じりにそういわれてしまえば、それ以上追及できない。ゴメン、と小さく謝りそれ以上聞こうとはしなかった。
「ここだよ」
自分の家が見え、ことりは柚希に言う。顔をあげたのを見て、ことりはいつものように玄関の扉を開けた。
がちゃり。
「ただいまー。」
「お帰りなさい、こと...陽君。」
にっこり。少しだけ強張った表情の母親が出迎えてくれた。柚希は少し頭を下げ、お邪魔しますと言う。
テレビで見たことのある顔に、母親は大きく目を見開いて強張った表情から満面の笑みになった。