男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
それから暫くして、柚希は風呂からあがってきた。
髪が濡れていて、熱で頬が少し赤くなっている。ことりは少し見惚れてしまった。
(い、色っぽい///)
「陽?」
ぼうっとしていた為に、
柚希に声をかけられて慌てて返事をすればフッと笑みをこぼした。
「え、あ、じゃあ、次入ってくる!」
照れを隠すように、ことりは慌てて脱衣所に向かった。
そんな娘の姿を見て母親は思わず笑みをこぼす。
「柚希君、あんな娘だけどよろしくね。」
「え?娘?」
「む、息子よ。ことりと間違えたわ、ごめんなさいね。」
危ない危ない、母親は思わず手で口を覆った。
ことり、という聞いたことがある名前を聞いて柚希は口を開く。
「ことり、さんは居ないんですか?」
「え、ええ。今日は友達のお家に泊まりに行ってていないの。」
「...そうですか。」
たしか、ことりについては陽から聞いたことがある。
自慢の双子の妹だとかでたまに話してくれた。
ことりの事を話すときは、いつも楽しそうだった気がする。
シン、と静まりかえったリビング。
柚希はもともと話すほうではない為に、沈黙が気まずさをだしていた。
「柚希君、階段をあがってすぐ左の部屋が陽君の部屋だから
先に行っていたらどうかしら?
テレビも勝手につけてくれて構わないし。
何のお構いもできないけどゆっくり休んでね。」
「...有難うございます。」
急にきた自分にとても親切にしてくれる陽の母親に感謝をのべつつ、
柚希は言われた通りに陽の部屋に向かった。