男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
少し考えて、ことりは口を開いた。
「やっぱり、俺も出ないかな。」
「そうか。」
柚希は深入りをしてこない。
それが何故かわからなかったが、ことりには人と仲良くなるのを避けているように感じた。
「・・・。」
「・・・。」
沈黙。
少しだけ気まずい室内で、何か話題はないだろうかと考えていると柚希はぽつりとつぶやいた。
「俺は、アイドルとして生きなければいけない。」
「・・・え?」
どうして、そんなことを言うんだろう。
まるで、最初から決まっていたかのように柚希は続ける。
「両親を、見返したい。」
そういってことりの目をみた柚希の表情は真剣だった。
ああ、恰好良いな。素直にそう思ってしまった自分がなんだか恥ずかしくなる。
「柚希ってさ、人を、避けてる?」
話題を逸らすように思ったことを口にすれば、柚希の表情が強張った。
「あまり、深入りしてこないから・・・最初はただ不器用なんだなって思っただけなんだけど、違うみたいだし。
なんで?仲間なんだから、俺は柚希と仲良くなりたいと思う。」
「良く堂々と恥ずかしいことを言えるな。」
「本心だよ。」
そう、本心だ。
彼と仲良くなりたい。
最初は苦手意識を持っていたが、彼の事が気になる、知りたい。
「避けてる、といえばそうなのかもしれないな。」
フッ、と自嘲するかのように笑うと柚希はことりに視線をうつした。
ことりは、その言葉の後を待っていると突然彼の手が自分の髪に触れた。
ドクン、
「俺は、お前のようになりたい。」
突然そういわれたことりは、ぽかんとして柚希を見ていることしかできなかった。