男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
それから、不思議な雰囲気が室内を包み込んだ。
陽のようになりたい、と言った柚希の心境が読めない。
まずは、そう。
彼と仲良くなり理解しあえるようになった方がいいのかもしれない。
「柚希!」
彼の名前を呼べば、思った以上に声が大きかった。
自分でもあまりの大きさに少し驚いてしまう。
「...なんだ?」
ことりは少し頬を赤く染めながらぽつりとつぶやいた。
「俺と、友達に、なってください。」
「っぷ、ハハハ!」
突然笑い出した柚希を見てさらに顔を赤くさせた。
「な、なんで笑うんだよ!」
「お前は、本当にっ、分からないな。」
(ああ、もう、言わなければよかった!)
本当に恥ずかしい。
穴があったら入りたい。
「だって、柚希の事が知りたいから...。」
言い訳のようにそういえば、今度は柚希が目を見開く番だった。
自分に好意を持っているような発言に、驚く。
それに、なんだか可愛くも見えた。
相手は男だ。
なのに、そう思うのはおかしいのかもしれない。
「...なってやっても、いい。」
自分でも、どうして陽と友達になろうと思ったのかが分からなかった。
今までは、友達というより同じグループの仲間のような関係だった。
プライベートでの付き合いは全くもって、ない。
「え、ほんと?」
「ああ。」
きっと、興味ない。とかふざけるな、とか言うだろうと予測していたことりに嬉しさがこみ上げてくる。
満面の笑みで これからよろしく! と言えば、柚希の顔が少しだけ赤く染まったように見えた。